昭和54年の頃だったろうか。
ある月刊誌(名前は失念したが)に、旅行好きで世界中をまわった若い女性の記事が載っていた。
彼女によると、訪れた国で一番良かったのが、アフガニスタンだと言う。
「とにかく街並みが美しく、緑が素晴らしい。そして人々が暖かいの!」と、絶賛。
そのため、大学の卒論も『ガンダーラ文化』にしたとのこと。
『ガンダーラか。じゃあ「西遊記」の天竺ってアフガニスタンの事だったんだ。ゴダイゴが歌ってたよね、〜素晴らしいユートピア〜♪て、ふーん、いつか行ってみたいな〜』
それからしばらくして、ソ連がアフガニスタンに侵攻というニュースが飛び込んできた。
アフガニスタンどうなるんだろう、とちょっと気にかかったが、その後のモスクワオリンピックボイコットの方が自分には驚きで、
「えー、日本はオリンピックに出ないの?ショック〜」
と思っているうちに、アフガニスタンの事は忘れてしまった・・・。
・・・そして2007年、アフガニスタンの状況は当時より更に厳しい。
さて、高木徹著『大仏破壊〜ビンラディン、9・11へのプレリュード』を読んだ。
2001年3月、9・11の半年前、アフガニスタンのバーミアン大仏がタリバン政権によって破壊される。大仏は2体であった。
象徴的なこの事件の半年後の「9・11」そしてテロ戦争、タリバン政権の崩壊。
実は、この大仏破壊に関しては、多くの人々が阻止しようと奔走している。国連やユネスコ、歴史学者など、その中には日本人もいた。
そしてタリバン内部でも、大仏破壊を止めようとする人が多かったにも関わらず、いつのまにか崩壊の道を進んでいく。
それはあたかも、高木氏も表現しているが、オサマ・ビンラディンという寄生虫が、タリバン内部に棲みつき、やがて主を食い破って新たな主になったようだ。
その原因は何だろうか。
単純には言い切れないが、ただ、タリバン内部にこんな声があった。
「世界は、我々が大仏を壊すと言ったとたんに大騒ぎを始めている。だが、わが国が旱魃で苦しんでいたとき、彼らは何をしたか。我々を助けたか。彼らにとっては石の像のほうが人間より大切なのだ。そんな国際社会の言うことなど、聞いてはならない」
この言葉は正しくはない。
国連やNGO、様々なボランティアなどが、アフガニスタンを援助してきた。日本も多額の援助をしてきた。
だが、その心情は分る。確かに多くの国やマスコミはアフガニスタンに無関心だった。石仏が破壊されると聞いて、あわてて大騒ぎする国際社会を、彼らは苦々しい思いで見ていたのだろう。
〜どんな夢もかなうという素晴らしいユートピア〜♪
日本人女性が心から愛した国、アフガニスタン。
無関心の責任は重い。それは私も含めてだ。
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