薔薇亡くなって初めて、その作家の本を真剣に読み出す、というのは拙の悪い癖だが、ご他聞にもれず、このたびも藤原伊織氏の著作を読みあさっている。

だが寡作ゆえ、読み終わるのはもうすぐだ。寂しい・・・。

さて、今回読んだのは、『シリウスの道』だ。

読後の感想は・・・・「イオリン、欲張りすぎ!」

主人公は大手広告代理店の副部長。イオリンワールドではおなじみのちょっと疲れた、だが魅力的な中年男である(例によって女性にもてる)

その彼が中心となって、18億円の熾烈な広告コンペを戦うことになるのだが、それに25年前のある秘密が絡まってくる・・・というものなのだ。

個性的な登場人物、会話の洒脱さ、巧みな文章などは相変わらずだが、詰め込みすぎて、ちょっと散漫な印象を受ける。

とくに25年前の、2人の幼なじみとのくだりは天童荒太氏の『永遠の仔』とかぶってしまうし、彼らとの秘密が今回のコンペと結びつくあたり、ちょっと強引と言うか不自然な気が否めない。

私としては、広告コンペを中心に、それに関わる人たちの人間模様を、もっと濃くあらわして欲しかった。

特に彼の部下である25歳の青年。親のコネで入社しながらも、見事な成長をとげる彼の気持ちをもっと知りたかった。

イオリンはサービス精神が旺盛すぎるのだろうか。

サービス精神といえば、この作品では、あの『テロリストのパラソル』に出てくる奇妙なバーが再登場する。

そこは食べ物はホットドックしか出さないのだが、これがまた旨そうなのだ。

フライパンにバターを溶かし、ソーセージを軽く炒めた。次に千切りにしたキャベツを放り込んだ。塩と黒コショウ、それにカレー粉をふりかける。キャベツをパンにはさみ、ソーセージを乗せた。オーブンレンジにいれて待った。そのあいだ、ふたりの客は黙ってビールを飲んでいた。
(テロリストのパラソルより)

いかにも男の食い物、てな感じで、この無骨な男が手際よく作った味はどんなものなのか、想像するだけで、よだれが出る。

さて、鬼籍に入った作家の作品に難癖をつけながらも、自ら支離滅裂な文章でしめる拙は、やはり外道かな。

シリウスの道