さとうさん今年の4月、エリツィン元ロシア大統領が亡くなった時の日本の対応には、唖然とするものがあった。

他国では、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領(パパの方ね)、メジャー元英首相他、欧州の各国首脳や外相が国葬に訪れたのに、日本では、駐在モスクワ大使が参列しただけ。

ソ連消滅、そしてロシア連邦発足の中心人物であり、日露関係においても、一時かなり良好で、もしや北方領土も・・・・と思ったものだ。

この日本の冷たい対応・・・。単なる外務省の不手際ならば、お粗末過ぎるし、もしロシアを軽んじているのであれば、深刻な問題だ。
エリツィンが危険な状態であるころは、前から分っていたのだから。

さて、佐藤優の『自壊する帝国』を読んだ。

これは、ソビエト連邦が崩壊していく姿を現地でリアルタイムで見続けていた新米外交官の青春物語である。

この物語、やたらとご馳走が出てくる。

最上級のキャビア(茶さじ一杯で4千円くらい)などの珍味佳口。
最高級レストランでのロシアの皇帝料理、フランス料理、イタリア料理、日本料理の数々・・・・・そしてウォトカ、ウイスキー、等等。

佐藤氏がソ連の要人と会うときは必ずご馳走も寄り添っているのだ。

ただ彼自身はそんなにグルメではないようだ。

ソ連の代用コーヒー(藁と麦を煎じて牛乳を入れて煮込んだもの)が好きだったり、前著『国家の罠』でも拘置所の食事は意外とうまかったと感想を述べている。

それにしても彼の人脈作りはスゴイ。

政府の首脳、知識人、軍人、ジャーナリスト、宗教家・・・。

綺羅星のような人たちが、異国の新米外交官に、重要な情報を流す。若しくはリスクを冒してまで重要機密を漏らす。

確かに佐藤氏は、宗教や哲学の素養があり、魅力的な人物だが、それだけで、西側に重要な情報を教えるものだろうか。

確かにお金の力もあろう(当時ルーブルは下落していた)、彼のご馳走攻勢が功を奏したこともあろう。だが私は思う。

日本の情報をソ連に漏らしていたのではないか。

彼自身、他の著作の中で『情報の収集はギブ・アンド・テイクだ』と発言しているし。

真相は分らない。

だが、仕事を愛し、自分の能力の限りを尽くしてソ連(ロシア)高官らと絆を作っていた姿には、心打たれるし、そのひたむきさには感動する。

そんな若き日の佐藤外交官と、今の外務省。

ロシアは遠くになりにけり。

自壊する帝国