最近立て続けに、伝記もの映画を2本観た。

『ミス・ポター』と『エディット・ピアフ』だ。

どちらも女性の人生を描いたものだが、雰囲気が全く違う。

前者がアルプスの天然水ならば、後者はギリシャの蒸留酒ウゾーのような味わいなのだ(つか飲んだことないけど)

さて、その爽やかな『ミス・ポター』であるが、イギリスの有名な絵本「ピーター・ラビット」の作者、ビアトリクス・ポターの半生を描いたものだ。

まず映像が素晴らしい。

英国の湖水地方の奇跡的な美しさを観るだけでも、価値がある。

さて、20世紀初め、ミス・ポターは上流階級の娘だが、もう30過ぎ。その頃としては嫁き遅れだ。

動物の絵本を描いてはせっせと出版社に持ち込むが、いつも相手にされない。

当時、上流階級の女性が職業を持つなど、とんでもない事とされていたので、両親の悩みは尽きない。

だがひょんな事から絵本が出版される事になり、本はトントン拍子に売れ、やがて編集者の男性ノーマンとポターの間に恋が芽生える。

当然ポターの両親は身分違いということで、2人の結婚には反対するのだが、ここまでの流れがえらくユルイのだ。

ポターもノーマンも30過ぎ。親の庇護など必要ない年齢なのに、従順なのかおっとりすぎるのか、特に逆らう事もせず、辛抱強く許しを待っているのがいかにも20世紀初頭の英国風である。

また、このトウの立った中年カップルのラブシーンが、気恥ずかしいほど純朴だ。

ポターが親の命令で、夏の間、湖水地方の別荘で過ごす事になり、駅で別れを惜しむ恋人同士は、初めてのキスを交わす。

おずおずと唇を重ねる2人の姿を、機関車の煙がそっと隠すシーンなど、古風すぎて、逆に新鮮である。

その後、ポターに大きな不幸がやってくるが、大げさに騒ぐ事もなく、物語は淡々と進み、静かに終る。

この何ともいえぬゆったりとした流れが心地よい。

あえてドラマティックにせず、抑えた演出は、美しい風景と相まって、ピーター・ラビットの世界をより浮き立たせるのだ。