jイギリスのシンガー・ソング・ライター、
ジェイムス・ブラントの2枚目のアルバム『オール・ザ・ロスト・ソウルズ』が発売されたのは、先月、9月19日だった。

好きなアーティストの新作なのだから、本来は飛びつくところだが、今回はなぜか気が重く、ぐずぐずしていてやっと最近購入した次第だ。

なにせ前回のアルバム『バック・トゥ・ベットラム』がイギリスを始め、ヨーロッパの国々で、軒並み1位を記録。全世界で1300万枚以上のセールスを記録した。

なかんずく、シングルカットされた『ユア・ビューティフル』は、日本で、CMやドラマの主題歌としても使われ、多くの人々の心をつかむ。

だが、これらのメガヒットがアダとなり、最近は、彼に対する欧州メディアのバッシングともいえる辛辣な批判が続いた。

いわく「聞いていてイラつく」「飽きた」「一発屋だ」云々・・・。後はお決まりの女性スキャンダル・・・・。

散々持ち上げた後に落すメディアの手法は、日本も欧州も同じだ。

そんな訳で、世界中の人から機関銃を向けられていたアルバムを、恐る恐る聴いてみたのだが、私の心配は杞憂に終った。

この肩の力のぬけ具合、気負いのなさは何だろう。

メガヒットの後の2作目というプレッシャーが無い筈はないのだが、楽曲はあくまで自然でかつ繊細に仕上がっている。

まるで良質のコットンシーツに包まったような、安らぎに満ちている。

彼の少し湿り気のある、枯れたヴォーカルも健在だ。

今回のアルバムは、70年代のロック・アルバムの雰囲気がテーマだそうだが、確かに、74年生まれの彼の楽曲やスタイルには、なぜか70年代の匂いがする。

キャット・スティーブンス、ジェイムス・テーラー、エルトン・ジョン。
女性ならカーリー・サイモン、ジャニス・イアンなど・・・。

そしてその頃、私自身は中学で、英語を習い始めた時期だったが、不思議と彼らの英語の歌詞がスッと耳に入ったものだ。

なぜ英語のできない私が聞き取れたのか分らない。

その頃のアーティストの丁寧な発声や歌詞に秘密があるのか、単に私の耳が良かったのか、それとも好きな音楽を聴ける歓びが、言葉の壁を越えるのか・・・。

今じゃ英語の歌詞どころか、J・ポップのそれでさえ、聴き取れない時がある。情けない。

そしてハタと気がついた。

ジェイムス・ブランドの歌う歌詞も、70年代のアーティストと同様、私の耳にすっと入ってくるのだ。この気持ちよさ。

この嬉しさは、英語の出来る人には分らないだろうな。

『ユア・ビューティフル』のようなメガヒットはなくても、彼の音楽は、多くの人々の心に、ささやき続けることであろう。

 

オール・ザ・ロスト・ソウルズ
Back to Bedlam