子供のころ(というか、今もだが)親戚の集まりというのが苦手だった。

特に法事が終わった後、男たちが酒盛りをしている傍らで、コタツに集まってする、女同士の四方山話が怖かったのだ。

彼女らの饒舌さ、たくましさ、地に足の着いた強さに圧倒され、私はいつも皿洗いや親戚の子のお守りを口実にその場から逃げていた。

自分も女でありながら、女同士の仲間に入れない、かといって男性的な性格でもない、私は出来そこないの人間のように思われた。

さて、ペドロ・アルモドパル監督の映画『ボルベール<帰郷>』を観た。

この映画も怖い。まず濃いすぎる。

この監督の映画はいずれも癖が強いのだが、今回はより激しい。まるで原色の濃縮ジュースのようだ。

そして主役のペネロペ・クロス。あまりに美しく色っぽすぎる。

そのため周りの登場人物がかすんで見える。

特にスペイン系の女性は美人とそうでない人の差が、極端すぎる気がする。

びっくりするほど美しい人がいるかと思えば、パースを間違えたような造形の顔立ちの人もいる。それがこの映画の雰囲気をより濃くさせているのだ。

さて、物語はペネロペ・クロス演じる主婦ライムンダの娘が父(つまりライムンダの夫)からレイプされそうになり、娘が逆に父を殺してしまう事件から始まる。

そしてライムンダは娘のため、父の遺体を隠す。

これだけでも大事件だが、実はこれはほんの前菜に過ぎない。

話が進むにつれ、女たちの秘密、そしてしたたかさが明らかになっていく。そして思う。やはり女は怖い。

それにしてもペドロ監督は男でありながらよく女の生理がわかるものだ。

見終わった後、悪酔いをしたような気分になるが、しばらくするとまた観たくなる。不思議な媚薬のようだ。