初めてユトリロの絵を見たのは、いつだったろうか。
たしかカレンダーに描かれた白っぽい家がそうだと思う。
重く立ち込める空とくすんだ家の壁と、同じくねずみ色の石畳。
沈鬱で暗い絵なのに、なぜか私の心を惹きつけた。
さて、先日福岡県立美術館の『ユトリロ展』を観にいった。
折りしも、ユトリロの『白の時代』を思わせるような、どんよりした曇り空の日だった。
『白の時代』と比べて『色彩の時代』の頃の作品はいまいち人気がないようだが、私は『色彩の時代』の鮮やかな絵も、可愛らしくて好きだ。
特に腰の張った女性の後姿。解説によればユトリロの女性嫌悪の表れとのことだがそうだろうか。とてもユーモラスに見えるのだが。
女性といえば、ユトリロの生涯は、母親と妻に支配されるがままの人生だった。2人とも商魂たくましくしたたかだ。
とくに51歳の時に結婚した妻、リュシー。
夫に水で薄めたワインを飲ませ、絵を描け、絵を描けとせっつく。
そして人気のあった『白の時代』の絵を模写せよと命じ、ユトリロの絵1枚に自分の絵(妻も絵を描くらしい)2枚を抱き合わせて売りつけたりとあこぎの限りを尽くしている。
でも、彼のようなアルコール中毒者で半ば人格破綻者には、この鉄壁の防波堤のような妻は、ふさわしかったのかもしれない。
昔、「あられちゃん」や「ドラゴン・ボール」のメガヒットで長者番付の常連だった漫画家の鳥山明氏が、家ではいまだにお母さんからお小遣いをもらっていたという話を聞いたことがある。
世の中とは、金勘定が得意な人と、まったく出来ない人の2種類でまわっているのかもしれない。
中途半端のその他大勢は、黙ってるしかないのか・・・。
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