今日本で、麻雀をやっている人はどれほどいるだろうか。

私が高校の頃、なぜか麻雀が大はやりで、授業をさぼっては級友の家や雀荘に入りびたり、チー、ポンやっている男子生徒も少なくなかった。

考えてみると、こぎたない高校生が一生懸命大人ぶって、卓を囲んでいたわけだが、このたび観た、アン・リー監督の映画『ラスト、コーション』でも、麻雀のシーンが豊富に出てくる。

ラスト、コーション

こちらはガサツな高校生とは違い、上海の上流夫人たちの牌を動かす仕草のなんと優雅なこと。
赤いマニュキアの指をしならせ、冗談をいっては笑いさざめきながらも、油断なく周囲の視線をめぐらす女たちの様子に、戦況下の不穏な空気も感じられる。

さてこの作品は、日本軍占領下の1940年ごろの上海、傀儡政権の特務機関の顔役イーと、彼の命を狙う抗日運動家の美しい工作員(いわゆるハニー・トラップ)ウォンの物語だ。

トニーそしてイー役は、あのトニー・レオン。

『恋する惑星』や『ブエノスアイレス』を観、煮えきらないヘタレ男でありながら、雨に濡れたノラ犬のようなたたずまいに、すっかりまいってしまったものだ。

そのヘタレ感は『インファナル・アフェア』でもいかんなく発揮されたが、今回は抗日運動家を容赦なく処罰する鬼のような役だ。

そのせいか、この作品でのトニーは表情が硬く、緊張感で張り詰めている。

そして評判のセックスシーンであるが・・・・・。

・・・特筆するといえば、「この人たち体が柔らかいのね」ぐらいしか。

しかもぼかしが入っていたため、これは一体何を隠そうとしているのだろうか、今時ヘアを隠したりするのか・・・?
などついつい下賎なことを考えてしまうのであった。

そしてラスト、物語は、2人に本心を語らせぬまま終わりを迎える。

思うに、トニー・レオン扮するイーは、彼女が工作員であることに薄々気づいていたのではないか。

頭の良い男だから、アメリカが参戦し、やがて日本が敗北することは予想していたに違いない。

生き残って、死より辛い辱めを受けるより、愛欲に溺れながら美しい女工作員に殺されることを願っていたのではないだろうか・・・。

アン・リー監督の映画は、前作『ブロークバック・マウンテン』もそうだが、観た後、じわじわと心に沁みてくる。

今回も、しばらくは映像が頭の中をぐるぐる回りそうだ。

インファナル・アフェア