台湾映画『百年恋歌』のDVDを観ていたら、登場人物の住む台北の雑居ビルで、こんな看板を見かけた。

「一胎借款」「二胎特貸」「二胎」。。。。。

たぶんサラ金かなんかの看板だと思うのだが、「胎」という字が、妙に生々しく感じる。

中国語の教養がない私は、こんな些細な看板文字にも、反応してしまうわけで、まぁ逆にそれが楽しみでもあるが。

さて、肝心の映画『百年恋歌』(原題は『最好的時光』、字面的にはこっちの方が好きだ)は、名監督、ホウ・シャオシェン(候孝賢)の作品だが、私の目当ては主人公を演じるチャン・チェン(張震)だ。

この台湾の俳優は、眉目秀麗、端正な容貌ながら(美青年を形容する時、なぜか古文調になる)どことなくストイックで修行僧のようなたたずまいで、以前から気になっていたのだ。

物語は自由の夢オムニバス形式で、三つのストーリーがあり、まず『恋の夢』1966年。
兵役前に一度、ビリヤード場で玉突きをしただけの女の子を探して、台湾の田舎町を探し続ける青年。

なんともノスタルジックな雰囲気で、やっとの思いでめぐり会っても、お互い照れ笑いするだけでろくにしゃべろうともしない。

戒厳令下の薄暗い街、純情なカップルに、オールディズの名曲、「煙が目にしみる」「涙と雨」がとても切なく響くのだ。

自由の夢2番目は『自由の夢』1911年。辛亥革命前の話で、なんとサイレント形式。舞台は遊郭。私はこれが一番好きだ。

男は、台湾が日本の統治から自由になるのを夢に見ている、近代的理想主義の若き外交官。

女は芸妓。彼女は男から見請けされるのを願っているのだが、男は妾制度に反対しており、そのくせ彼女の義妹が見請されるのにお金が足りないと知ると、気前よくポンと大金を出したりする。

女が、妾に行く義妹に助言している内容がまた辛気臭いのだ。

「これからは早起きして向こうの舅や姑に尽くすのですよ。それから正妻さんにも礼儀正しくするように・・・・」

うわ〜、うっとうしい。そんな窮屈な生活より、遊郭でやり手ばばぁで過ごした方がよっぽど気楽じゃんと思うのだが、やはり妾であっても見請けされるのが彼女らの幸せなのだろう。

革命を夢見る男に女は言う。

「私の将来のことは考えて下さらないのですか」

優柔不断な男にとって爆弾級の言葉だ。

男は何の返事もしないまま、やがて辛亥革命を迎えるのである。

そして最後『青春の夢』2005年。

seisyunnnoyume前の2つが超まったりとした夢物語であるのに対して、これはいきなりバイクの轟音から始まり、男はカメラマン、女は歌手。

早産で生まれた女はいくつもの既往症があり癲癇持ちで、またバイセクシャルでもある。そして、そんな自分の姿をネットにさらしている。
男は彼女に興味を持ち、近づいていく。

この3番目はどうも好きになれない。

携帯、インターネット、依存症、レズ、トラウマ、なんか今更という感じの素材で、新鮮味がない。

それとも同じ時代であるが故の、近親憎悪的な不快感なのだろうか。

物語の中で歌手の女が、レズピアンの相手から、なぜ電話に出なかったの、なぜメールの返事がなかったの、となじられて、
「マナーモードにしてたの」「電源が切れてたの」と言い訳していたのには苦笑した。

今便利さと引き換えに、恋愛の形はどう変化していくのだろうか。

ホウ・シャオシエン監督 『百年恋歌』