不景気のせいか、私の住む地元の商店街は、軒並みシャッターストリートと化しているが、中には細々と商いを続けている店もある。それがまた謎なのだ。

十年一日のごとくのディスプレイ、ホコリだらけの商品、客の気配のない店内とやる気なさそうな店主。

この人たちって、どうやって生計を立てているのだろう?不思議でならない。

さて、日本映画『転々』の中で、登場人物が同じような疑問を率直に店主に尋ねるシーンがある。結果はトホホに終わったが。

この『転々』という映画も、不思議な作品だ。

オダギリジョー扮する大学8年生竹村は、借金が84万ある。返済期限はあと3日。

そこへ取り立て屋の福原(三浦友和怪演!)から借金をチャラにする方法を提案される。

それは、福原に付き合って霞が関までの散歩に付き合うこと。報酬は、百万円。

怪しすぎる話に躊躇するも、背に腹はかえられず、竹村は恐る恐る福原と一緒に歩いて行くことになる。

まず、2人の歩く街の風景が素晴らしい。

ディープな東京の街を、なめ回すように映像は進んでいく。

ここで描かれているのは、首都東京でも、国際都市TOKYOでもなく、関東ローム層に乗っかった一地方の東京だ。

そのたたずまいは猥雑でいい加減で懐かしい。

つか高層ビルを除けば、私の住む街と変わらない空気だ。

そしてそこに住む人々はひたすらゆるい。

だがそれは、丸腰の人間が、現実世界の不条理を受け入れながらも、たくましく生き抜いていくためのゆるさなのだ。

ところで、上記で「散歩」という言葉を使ったが、これは実際は散歩ではない。なぜなら福原の目的は決まっているから。

だから「散歩」よりは「寄り道」「道草」という言葉の方が相応しい。

シビアで重い『目的』に行く前に、ほんのひと時「寄り道」をしたかったのだ。

そしてこの「寄り道」の最後、孤独な2人の男の目に、東京の姿はどう映ったのだろうか。