以前、4Fミステリーというのに凝っていた時がある。

女性(Female)が作者、訳者、主人公で、読者も女性が多いというミステリーものだ。

スー・グラフトン著「探偵キンジー・ミルホーン」シリーズや、パトリシア・コーンウェルの「検屍官」シリーズなど熱心な読者だったのに、いつの間にか縁遠くなって久しい。

シリーズは今も続いているし、また読み始めたいなと思うのだが、一度止めてしまったシリーズ物はどうも垣根が高くて、結局そのままになっている。

さて、ローリー・リン・ドラモンド著『あなたに不利な証拠として』を読んだ。

これもいわゆる「4Fミステリ」と言っていいだろう。
登場するのは5人の女性警察官。

短編集だし、気軽な気持ちで読み始めたのだが、これが実に重かった。

先に書いた「探偵キンジー・ミルホーン」ではシリーズ冒頭、生まれて初めて人を射殺した主人公の苦悩から始まっているが、この短編集でも、第一篇の『完全』において、22歳の警察官が初めて強盗犯を射殺するに至る過程が、リアルに描かれている。

この短編集はいわゆる謎解きやサスペンスものとは違う。

そこにあるのは研ぎ澄まされた皮膚感覚だ。

血や火薬の匂い、死臭を嗅ぎ、見るも無残な死体を凝視し、銃の重みを手で感じ、撃たれた時の痛みや熱さに耐え、心臓の鼓動を聞く・・・。

警察官の日常である事件の現場を、これほど感覚的に描いたのは衝撃的だ。

読むほどに、現場の張りつめた空気、すえた臭い、血の匂い、そしてすさまじい恐怖が五感に伝わってくる。

だが、この作品は感覚的なものばかりではない。

特に『傷痕』などは、暴行された女性が、警察、病院、マスコミなどによってセカンドレイプされていく様子が、淡々と描かれており、読んでいて背筋が寒くなった。

そして最後、心に傷を負った元警察官がひたすら魂の再生を求めてさまよう、『わたしのいた場所』は、ミステリーを超えた、珠玉の物語だ。

銃社会アメリカ。

正当であれば銃で人を殺しても構わないという立場の女たち。

ある意味、贖罪の機会も与えられない彼女たちの魂の叫びが、平和な日本の私でも、うっすらと感じられた。