昔、中国に返還される前の香港を旅した時、近代的高層ビルや建設中のビル が林立する街並みと、一歩裏に入れば今にも崩れ落ちそうなボロアパートが、となり合っている姿に驚き、またそのアパートすれすれをジェット機が飛んでいる姿に不思議なカオスを感じたものだ。
「こんなにビルを建てて、地震の心配はないのですか」
小太りの現地ガイドさんに尋ねたところ、彼は汗をふきつつ、ゆるぎない声で答えた。
「香港は地震がありませんから」
なんでも香港の地殻はしっかりしているので地震は絶対ないとのこと。
あまり地震がないと言われた神戸で大震災があり、今までほとんどなかった福岡でも西方沖地震があった。
そしてこのたびの四川大地震。
四川と言えば、三国志の劉備玄徳の蜀の都「成都」があり、劉備と孔明が祀られている。
また野生ジャイアントパンダの自然保護区。
そしてピリッと辛い四川料理。麻婆豆腐、坦坦麺、チンジャオロース、回鍋肉、・・・・。
私の貧相な脳内イメージにおいて、一番中国らしい中国が、四川省なのだ。
北京や上海は興味がないが、四川省はいつか行ってみたいと願っていたのだが・・・。
被害は日に日に拡大している。
自分に出来ることと言ったら、雀の涙ほどの義捐金を送ることしかないが、一日も早い復興を願う。
確かにこの国に対しては、屈託がある。
排日運動、環境汚染、毒入りギョーザ、チベット問題・・・etc。
だがそれは、国民の基本的なインフラ整備はおざなりにして、国の威信や面子ばかりを気にする中央政府に問題があるのだ。
そして、中国国民は政府を選べない。
まして今回の大地震、もっとも被害が多かったのは常のごとく、社会的弱者や子供たち、政府高官など縁のない貧しき人たちばかりなのだ。
とにかく被災者の救出と援助を願って止まない。
そしてあの、香港の小太りのガイドさん。
彼は今もかの地で「絶対地震はありません」ってのたまっているのだろうか。
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