『アクロス・ザ・ユニバース』という映画のDVDを観た。
全編ビートルズの33曲に彩られたミュージカルということで、映画館で見たかったのだが、私の住む地域では上映されなかったのだ。
時代は1960年代。
イギリス・リバプールの造船所で働く青年が、まだ見ぬ父に会うため、そして自分の可能性に挑戦するために、アメリカに渡る。
場面変わってアメリカのハイスクール。
ブロム・パーティーで恋人と踊る金髪とブルーの瞳の少女。
だが、恋人はやがてベトナムへ派兵され、戦死する。
青年の名はジュード。少女の名はルーシー。
ちょっとベタ過ぎるかな、と思いはしたが、物語は、2人の出会いを中心に、アメリカ60年代の文化や風俗、ベトナム戦争と反戦運動、公民権運動、サイケデリック、ドラッグカルチャーなどを描いている。
ジャニス・ジョプリンやジミヘンを彷彿させる人物も出て興味深い。
そして、当時のドラッグ・カルチャーの伝道師、ティモシー・リアリーがモデルと思われるドクターロバートを、なんと私の嫌いなロビン・ウイリアムズが演じているではないか。
「えっ、なぜ!」と驚いたが、よく見たらU2のボノだった。
U2の曲は好きなのに、ボノが好きになれない理由は、彼の言動はもとより、その風貌が問題なのだと改めて分かった。
さて、ビートルズの歌詞を中心につづられる物語は絶妙で、創る側の、一つ一つの曲に対する愛情がひしひしと伝わってくる。
(自由の女神の出てくるシーンは笑った。確かにヘヴィーだ)
そして何より役者が良い。
有名な俳優はいないのだが、みなピュアで何より歌が上手い。
特に主人公のジュード役、ジム・スタージェスの、いかにもイギリスっぽい風貌には惹きつけられた。
繊細で前衛的でありながら、どこかあか抜けなくて古風な感じ。
彼は恋人ルーシーを愛しているが、彼女のベトナム反戦運動には懐疑的な目で見ている。
そして絵の才能を見いだされたジュードに対して、ルーシーは、「徴兵されないからってお絵かきばかりして」となじる。
そう、ジュードは声高に主張したりはしない。だが、だれよりも深い感受性を持っている。
そしてそれは、そのままビートルズにも当てはまる。
ビートルズの歌詞は、言葉遊びみたいなものもあるが、多くは日常的なもの、だが普遍的な真実や哲学を歌ったものが多い。
平和だの反戦だのを大仰には語らない(それは解散後のことだ)
だから解散して30年近くなるのに、色褪せることなく、歌い継がれていくのだろう。
アクロス・ザ・ユニバース デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]
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