城今、司馬遼太郎著『坂の上の雲』6巻目を読み進んでいる。

日露戦争の状況だが、日本は、どうにか旅順は陥落したものの軍は疲労困憊し、兵士や武器も慢性的に不足しているところに、冬将軍がやって来る。

一方ロシアのバルチック艦隊だが、様々なトラブルに悩まされ、今アフリカ東部、マダガスカル島に繋がれたままになっている。

さてこれからどうなるのか気にはなるのだが、戦闘シーンが続いたせいか、いささか食傷気味ではある。

それで思いだすのは、陥落する前の乃木軍率いる旅順攻撃の話だが、作者司馬遼太郎氏は、口をきわめて乃木将軍を罵倒し、無能と決めつけ、彼のために何万という兵士が無益の死を遂げていると結論付けている。

その語り口は、まるで姑が憎い嫁をののしるように、容赦がない。

また陸軍の上層部も乃木の無能を知りながら、長州藩出身だの、その参謀は薩摩藩だからだの、メンツにこだわり、更迭されない。

その間、何の工夫もない「突っ込めー!!」一本槍の戦法で、屍の山が累々と築かれていくのだ・・。

う〜ん、彼の戦下手は聞いたことがあるが、これほどひどいとは思わなかった。(もちろん、あくまで司馬遼太郎氏の見解だが)。

乃木希典と言えば、数々のエピソードがあるが、目を引くのはそのストイックさだ。

西南の役に従軍していた時、敵の薩摩軍に軍旗を奪われ、その失態を恥じ、自殺しようとまでした事。

ドイツ留学中の給料は受け取れないとひと悶着起こした事。

息子2人が旅順で戦死した時、「戦死したことを喜んでいます」などと語ったこと。

そして明治天皇大喪の夜、妻と共に殉死した事等々・・・。

なんかずいぶん手のかかる人だし、家族はえらい災難だ。

しかし戦後、彼はその高潔さや無私、禁欲的な生き方が称えられ、軍神と崇められるようになった。

だがなぁ、肝心の戦はダメダメなのに、その言動、パフォーマンスで「軍神」扱いされるのは・・・・・・。

有事に必要なのは、高潔だが無能の将より、性格悪くても戦上手の将だと思うのだが。

でもそれでは日本人の好きなお話にならないのだろう。

私の住む隣の市、下関には『乃木神社』があり、何度か参ったことがあるが、果たして彼は自分が祀られていることを喜んでいるだろうか。

乃木神社の近くで