軍曹映画『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』の DVDを観た。映画館で見損ねていたのだが、気になっていた作品だったのだ。

監督と主演は、コメディ俳優でもあるベン・スティラー。

内容は、ベトナム戦争をテーマにした映画を作っているが、俳優らのワガママで撮影が進まない上に、スタッフのミスで予算オーバーしてしまったのにキレた監督が、一計を案じ、役者らをだまして東南アジアの密林ジャングルに放り込み、リアルな映像を撮ろうとする。

だが、そのジャングルは、危険な黄金地帯。麻薬密造のアジトだったのだ・・・・・・・。

災難にあう役者は5人。

爆破落ち目のアクション俳優タグ(ベン)、お下劣ネタが売りのコメディアンで麻薬中毒のジェフ(ジャック・ブラック)、名優だが役にのめり込み過ぎ、黒人兵に扮するために手術までしてしまう役者バカ、カーク(ロバート・ダウニ―・Jr)、ラッパーあがりの女好きの黒人俳優アルパ・チーノ、新米俳優で人数合わせのために選ばれたジェイ。

・・・・・いやぁ面白かった。楽しかった。

実はこの作品、抱腹絶倒のおバカ映画、お下劣戦争パロディコメディに見せかけておいて、実は、映画作りへの愛と情熱、そして苦悩を描いたものだ。

水牛とハチャメチャのコメディは、監督の照れ臭さではないかと思うのは、考え過ぎだろうか。

まずここそこに散りばめられた名画のオマージュが楽しい。「地獄の黙示録」「プラトーン」「ディア・ハンター」「フォレスト・ガンプ」etc・・・。「薔薇の名前」もあったなぁ。

役者が主人公だから当然彼らの会話の中に、映画の話題もよく出てきてそれも興味深い。

特に感銘を受けたのは、人気が低迷気味のタグに、オスカー俳優のカークがアドバイスをするシーンだ。

実はタグはアクションスターのイメージ打破のため、知的障害者が主人謎のゲリラ公の感動作品で起死回生を狙ったが見事に大コケ。史上最低の作品と酷評を受けている。

『自分は知的障害者になり切ったのに』とこぼすタグに、名優カークが言う。

『君は100パーセントなり切ったがそれは間違いだ。客の共感を得られない。「レインマン」や「フォレスト・ガンプ」がアカデミーを受賞して、ショーン・ペンの「アイ・アム・サム」がノミネートだけに終わった理由が分かるか』

う〜ん、確かに私も、ショーン・ペンの「アイ・アム・サム」を観て、凄いなぁと思いながらもどん引きしてしまった記憶がある。

客は映画を観に来ているのであって、完璧な障害者が見たいのではないのだ。

だがそんな含蓄のある言葉を吐くカーク自身も、様々な役を演じているうちに、自分のアイデンティティを失いかけており、役を離れた素の時も、黒人軍曹の口調が出る始末だ。

カーク役のロバート・ダウニー・Jr自身、若い頃から天才的な俳優でありながら麻薬にのめり込み、地獄を見た時期があったから、感慨深い。

お下劣コメディ俳優ジェフは麻薬中毒、そして黒人ラッパーのアルパ・チーノも実は深刻な問題を抱えていた。

皆が悩みを抱えている中で、新米俳優ジェイだけがカラッとしており、最初は気の弱い青年の彼が、ラストにはいつの間にか5人のリーダーとして活躍するのには驚いた。顔つきも全然変わっているし。

映画への愛にあふれたおバカ作品。俳優である以上、彼らの悩みは終わらないが、その苦しみから感動が生まれるのだ。

トロピック・サンダー 史上最低の作戦 ディレクターズ・カット 調子にのってこんなに盛り込んじゃいましたエディション【2枚組】 [DVD]
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