佐々木譲の警察小説『笑う警官』を読んだ。

この作品、元々『うたう警官』というタイトルだったのを文庫化にあたり改題したとの事。

ただ『笑う警官』だと、スウェーデンの作家マイ・シューヴィルとペール・ヴァールーのマルティン・ベック・シリーズに同名作品があるらしい(私は未読だが)。

何でも若い頃の角川春樹氏が、マルティン・ベック・シリーズを手掛け、大成功を収めたらしく、彼が半ば強引に改題したらしい。

読後、やはり当初の『うたう警官』の方がピッタリだと思ったのだが、まぁハルキのわがままは置いといて、とても読み応えがあり、夢中になった。

内容は、北海道警察本部の婦人警官が死体で発見される。被疑者は交際相手だった同じ警察官。
そして道警トップは、被疑者津久井巡査部長に対し、強引な射殺命令を出した。

かつておとり捜査で津久井と組んだことのある佐伯警部補は、彼の無罪を信じ、ひそかに同志を集め裏捜査を開始する。タイムリミットは翌朝の10時まで。果して射殺を食い止めることが出来るのか・・・・・。

さて、警察小説と言うと、高村薫氏の作品を思い出すが、薫さん、何で警察の内部事情にこんなに詳しいの!と驚くほどの緻密で圧倒的な情報量に唖然としたものだ。

ただ薫氏の作品の登場人物は、いわゆるキャリア組が多く、頭脳明晰で眉目秀麗、それはそれで面白いが、ちょっとミーハーな気がしないでもない(←てか、何この上から目線!)

その点、この『笑う警官』に出てくる警官は主人公を含めてほとんどがノンキャリア。

しかも北海道警トップの理不尽な「捜査員に専門性を持たせてはならぬ」という意向から、大幅な人事異動が行われたばかり。

つまり刑事事件には素人ばかりの警察官が、現場を受け持つことになったのだ。

キャリアとノンキャリアの壁、慣れない捜査、情報不足、スパイの存在、あらゆるハンデを乗り越えながら、真相を究明していく男たち(女もいるが)の姿はたくましい。

しかも彼らが、いかにも野暮ったいおやじばかりだというのも良い味出している。

何ページに一回は炸裂する強烈なオヤジギャグには目眩がしてくるが、そのあか抜けなさが、いかにも実際の警察だよなぁと納得する。

ところで、主人公佐伯の回想の中で、津久井と組んだ人身売買組織摘発のおとり捜査の顛末が描かれているが、これがかなり緊張感があって本筋よりもドキドキした。

3か月ほどのおとり捜査の後、佐伯は人格が崩壊し妻と別れ、相棒の津久井は1年間、重いPTSDとなった。

そうなると映画『インファナル・アフェア』で、主人公ヤンが10年間潜入捜査官だったというのはどれだけ強い精神力なんだ・・・・。

閑話休題。この道警もの、シリーズ化されているようなので、次回の作品も読んでみたいと思う。

笑う警官 (ハルキ文庫)
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