久々に月刊誌『文藝春秋』を買った。9月号。
芥川賞受賞作『終の住処』を読みたかったのだ。

芥川受賞といえば何よりの楽しみは、山田詠美氏による、候補作への、切れ味鋭い悪口もとい選評を読むことなのだが、今回も絶好調だ。

森この辛辣な批評を読むと、逆に読んでみたくなるのは、彼女の人徳だろうか。

見事芥川賞に輝いた人は、三井物産次長なんだ、へぇ「時間」と「家族」の物語・・・。家族ねぇ、あまり興味ないしぃ、でも詠美さん、めずらしく推してるし〜。

躊躇していると、ふと、「総力特集・そのとき私は戦場にいた」が目に入った。
20人の著名人による戦争体験を生々しく語ったものだ。

芸能人、作家、学者、企業家など、あらゆるジャンルの方がいるが、当然、みな80歳、90歳を超えている。

10年後、このうち何人の方がご存命だろうか、そう思うと貴重な体験記だ。まずこちらが先だ。

当時、軍人だった人、下っ端の兵隊、疎開先の生徒、勤労奉仕の若者、満州の引揚者、外地慰問団だった人など、あらゆる立場から戦争をとらえている。

やはり悲惨な体験が多いが、その中で森光子さんの話は興味を惹いた。
慰問団の歌手として中国大陸を回っていた20代の彼女は、南京で、海軍の大尉と出会い、恋に落ちる。

その人は何と、南京国民政府、汪兆銘閣下の護衛官をしており、どうやら両想いだったらしい。
その後、日本の名古屋で二人は再会する。ちょうど汪兆銘が名古屋の病院に入院していた頃だ。

その後、その男性は森さんの実家、京都を訪れるが、あいにく森さんは東京へ行っていて留守。
彼は、家族の方に「お嬢さんをいただけませんか」と頭を下げたという。

それを最後に男性の消息は不明。
戦後、「戦犯として逮捕、処刑された」「名古屋で病死した」「ピストルで自殺した」など、さまざまな報せがあったという。

森光子さんって、ずっと独身で、あまり浮いた話も聞かなかったけど、こういうロマンスがあったのかと知ると感慨深い。

さて、終戦時、16歳だった人も、今はもう80歳。

記憶が美化されないうちに、一刻も早く、多くの話を聞き、後に繋げることが私たちの責務だと思う。

・・・・ところで、芥川賞の方は、どうしたんだっけ。

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