私の初めて海外旅行は、1978年のアメリカの西海岸だった。

ミルクと仲間たち坂の多いサンフランシスコの街並みを歩いていた時、ふと違和感を感じた。なんだか男の二人連れが多いのだ。
それによく見ると、仲良く手をつなぎ、指を絡ませて歩いている。

後になってその通りが、アメリカでも有名なゲイ・ストリートだと知った。

「さすがアメリカ西海岸!ナウいじゃん(’70年代なもんで)」と思ったものだが、先日見た映画『MILK』の主人公、ハーヴィー・ミルクが凶弾に倒れたのも1978年のサンフランシスコだった。

映画は、実在の人物、同性愛者であることを公表しアメリカで初の公職に就いた、サンフランシスコ市制執行委員(市議みたいなもん?)ハー恋人ヴィー・ミルクが凶弾に倒れるまでの8年間を追ったものだ。

オスカーに輝いたショーン・ペンの演技は素晴らしかったが、自分が日本人でノーマルだからだろうか「ゲイにも権利を!」と声高に主張するハーヴィーの行動にはいまいち付いていけなかった。

だってこの人、人前で平気で男同士、抱き合ったりキスしたりしてるし。年配やお堅い人が眉をしかめるのは仕方ないのでは。

それに「家族や友人、雇い主にも権利を認めさせよう!」ってそこまで主張する必要があるのだろうか。

普段は、普通に仕事をし市民生活を営み、プライベートの時間に愛の生活を楽しめば良いのにと、同性にも異性にも愛の足りない薄情な私は思ってしまうのだが。

ミルクだが保守派の人たちもずい分大人げなく、ゲイを理由に解雇したり、ゲイの教職者を追放する条例を作ったりして、これも過激だ。

お互い正しくガチの勝負で、その点、なるべく波風立てないようにしたがる日本とはエライ違いだ。

そんな訳で、ハーヴィーの政治活動にはあまり感情移入できなかったのだが、さすが若い男の子を撮らせたらピカ一のガス・ヴァン・サント監督。
前作の『エレファント』や『パラノイドパーク』で魅力的な少年たちを描いていたが、今回も、ハーヴィーの周りに集まってくる男の子たちは、いずれ劣らぬ美形ばかり。

そして女性の描き方ははおざなりというか、明らかに手抜きなのは相変わらず。

ただ若手の俳優たちに囲まれて、ショーン・ペンの加齢というか皺が目立ったのも事実だ。

そろそろ彼も体当たりの役は難しくなったのかなぁ。

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