マイケル・ジャクソンの映画『THIS IS IT』のDVDを初日に購入したものの、しばらく観ていなかった。実はあまり期待していなかったのだ。

さんざん劇場で観たせいもあるが、この作品はあくまで寄せ集めのドキュメンタリー映像で、大きなスクリーンの大音響の中で鑑賞するから映えるのであり、わが家のしょぼいモニターから見たらガッカリするのではないかと・・・・・。

・・・杞憂であった。
MJエァーまず、ヘッドフォンを使ったせいか、映画館では気付かなかった音を多く拾えた。

様々なパートの楽器の音はもちろん、マイケルの息遣いやステップを踏む音、くちゃくちゃガムをかむ音まで耳に入るのだからこれは楽しい。

そして劇場では見過ごしていた細かい動きや、マイケル以外のスタッフ、ダンサーたちやミュージシャンらも捉える事が出来て彼らの魅力も再発見出来た。

そんな訳で「本編」はすっかり堪能したのだが、「特典映像」を見ていて気になる事があった。

そこでは、ロンドン公演に向けての意気込みと共に、舞台で使う筈であった装置や仕掛け、衣装などを披露しており、その豪華さスケールの大きさに驚くと同時に、莫大な費用が掛かったのではと想像した。

シルク・ド・ソレイユばりの派手な舞台、大がかりな3D映像、特にエンディングの仕掛けにはさぞ観客は驚いたことだろう。
そして衣装、凝りに凝った水晶を何万も使ったもの、電飾を付けたもの・・・・。
衣装担当のデザイナーが『費用は幾ら掛かるんでしょう〜?』みたいなことを言っていたので、予算は気にしないで最高のものを作るよう指示されていたと思われる。

飛翔

もちろんこれらはマイケルのアイデアが中心で、彼が希望したものだ。

しかし・・・・、
特典映像の中で、プロデューサーの1人が、マイケルを称賛しながらも、申し訳なさそうに「採算がとれるかが問題なんです・・・・・」と語っていたのが印象に残る。

50公演という過酷なスケジュールを立てたのも、ペイするために必要だったのだろう。

昔、マイケルのライブを見に行った友人も言っていた。
『他の日本人アーティストと同じ、いやむしろチケットは安かった。その割に舞台は驚くほど派手で、あれで採算合うのかな〜』と。

もとより私はいい加減な似非ファンだが、長い間待ち続けていた真のマイケルファンはどう感じただろうか。

例をあげて言うと、ある女性がいて、彼女には10年ほど前、出て行ったきり音信不通になっている恋人、兄、弟でもいい、いたとする。
風の噂では悪いことばかり伝えられる、お金にも苦労しているらしい、心配で堪らない。

そんな彼がある日ふらっと帰ってくる。
がりがりにやせているのに、手には持ち切れないほどのお土産を抱え嬉しそうに笑っている。
グラミー賞その女性はきっとこう言うだろう。

『私は、あなたの顔さえ見られたら幸せなのに、こんな無理をして、ホントにばかねぇ…』と泣き笑いするだろう。

ファンの人たちは、電飾のきらびやかな衣装や大掛かりな仕掛けを望んでいた訳ではないと思う。

たとえマイク一本でもいい、元気で歌い踊るマイケルが観たかった筈だ。

でも彼は完璧を求めていた。観客の驚かすのに喜びを感じ、子供のように胸をワクワクさせ、あれこれアイデアを考えていたのだろう。

マイケルの血のにじむような努力とファンたちの忍耐、それが徒労に終わったとは思いたくない、そこには確実に「愛」があったのだから。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
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