先日観た『英国王のスピーチ』が、物足りなかったなぁ、と思いながらビデオショップでふと見つけたDVDが、やはりコリン・ファース主演の『シングルマン』。
この作品は去年、コリンが初アカデミー賞主演男優賞にノミネートされていたもので(あいにく受賞できなかったけど)、ぜひ劇場で観たかったが、私の住む地方では上映されなかったのだ。
地味なキャラのせいなのか、彼の映画は上映に恵まれない。
さて、肝心の内容だが、始まって1秒ですっかりとりこになった。まあその映像のスタイリッシュで美しいこと。
聞けば監督のトム・フォード氏は、著名なファッション・デザイナーで、グッチやサンローランなどのファッション・ブランド再生化の立役者でもあるという。
ストーリーは、1962年、キューバ危機の時代、最愛の恋人を事故で失ったゲイの大学教授が、死を決心した、その最後の1日を描いたものだ。
スペインか南米の映画と見紛うほどの、大胆で斬新な映像に負けないのが、コリンの静謐な演技だ。
愛する人を亡くした喪失感、哀しみ、怒り。
それだけではない。痛いほど感じている隣人らの蔑みの視線(当時ゲイは、まだ偏見が強かったと思われ)
穏やかな大学教授の風を装いながらも、その内心は察するに余りある。
正直、『英国王のスピーチ』よりもこの作品の方が何倍も好きだ。なぜアカデミー賞をとれなかったのだろう。
ところで、『シングルマン』には美青年が何人も出てくるのだが、その一人、ケニーという大学生。
どこかで見た顔だな、と思ってたら、なんと『アバウト・ア・ボーイ』で、いじめられっ子役を好演していたニコラス・ホルトではないか。
あのぱっとしないガキがこんな美しい青年に成長したなんて。
という訳で、内面的にも外面的にも、たいへん美しい映画でした。
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