羊最近、村上春樹氏の短編をよく読むようになった。

以前は私、氏の小説は苦手で、まるで翻訳小説を読んでいるようなスカスカ感、地に足が着かない雰囲気にどうしてもなじめなかったのだ。

ただ、最近知り合った職場の人が村上ファンで、楽しそうに『海辺のカフカ』や『1Q84』を語っているのに触発され、この機会に再チャレンジしてみようと思ったのだ。

まずは短編から読み始めたのだが、これが、実に・・・・・面白かったのですね〜!

長編を読んでいた時に陥った空疎感もなく、その凝縮された世界、選び抜かれた日本語、これ以上ないと思われる比喩、ああもっとこの世界に浸りたい、と思った時には終わっている物語・・・・。

先週は『東京奇憚集』を読んだ。そして今、彼が自分自身のことについて語った『走ることについて語るときに僕の語ること』を読み終えたばかり。

この調子で村上作品を好きになれば、今まで知らなかった世界が味わえるかもしれない、楽しみだ。

さて、『走ることについて〜』だが、村上氏における「走ること」への比重の大きさに驚いた。

まるで彼の生活の中心は「走ること」で、小説を書くことは、ほんの余技のような気さえしてくる。

彼は「走ること」について、好きだとか情熱を持ってとかは一切言わず、日々の練習風景や、我が肉体のコンディションや、大会の様子や、走りながら移り変わる風景や心を、ただ淡々と描いている。

それは、専業主婦が、日々の家事日記や育児日記を書いているようだ。

どちらも継続が大事で、一度サボると修復するのに大変な労力がいるなど、共通点もある。

特に、初めて42キロ走った真夏のアテネの体験記など、その苦しさ、生々しさは、初めてのお産体験記のようだ。

ただこれだけ、終始、走ることやマラソンについてリアルに描きながらも、不思議と汗臭さを感じないのが、村上春樹の世界なんだよな。

東京奇譚集 (新潮文庫)
東京奇譚集 (新潮文庫)
クチコミを見る
走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
クチコミを見る