私がよく利用するシネプレックス系映画館では、今『午前十時の映画祭』という企画が行われている。
これは往年の名作たちを、一年間連続50回、朝十時から入場料千円で上映するものだ。
そして今週は、『刑事ジョン・ブック 目撃者』ということで、公開当時、見逃のがしたこともあり、上映を待ち望んでいた私は、喜んで映画館に向かった。
粗筋は、『午前十時の映画祭』より、
ペンシルベニア州の片田舎に住むアーミッシュ(厳格な規律を守る超保守的なキリスト教の一派)の少年サミュエルは、母レイチェル(K.マクギリス)とともに叔母を訪ねて旅に出る。その道中、サミュエルは駅のトイレで殺人事件を目撃してしまう。担当刑事ジョン・ブック(H.フォード)はサミュエルの証言から警察内部の犯行だと感づくが、その矢先、犯人の手により銃で撃たれて負傷する。なんとか母子を村に送りかえすも、その帰りに気を失うブック。そして倒れていたところを村人に救われ……。
一見刑事もののサスペンス風だが、実はちがう。監督のピーター・ウェラーも、サスペンスにする気はさらさらないようで、早い時点で真犯人を明かしているし、ラストの、ジョン・ブックと犯人の死闘も、取って付けたようだ。
この物語のテーマは何と言っても『アーミッシュ』である。
こんなに誠実に、アーミッシュの人々、生活、その精神性について描いた作品がかつてあっただろうか。
シンプルで静かな生活。争いを好まない穏やかな人々。
電気のないほの暗い室内は、未亡人レイチェルの陰りある美しさをより引き立たせる。
またアーミッシュの人々が独特の言語(ドイツ古語)と英語を巧みに使い分けているのも印象的だ。
例えれば、ふだん方言で生活をしている人が、外部の人に対しては標準語で話すような。
彼らは独自の生活スタイルを持っているが、外部の人々(彼らはイングリッシュと呼んでいる)をまったく拒否しているわけではない。
自分たちの文化を守りつつ、イングリッシュの人たちと穏やかに共存することを望んでいる。
だから観光客らが、アーミッシュに対して見世物のようにカメラを向けても、抵抗しないし、地元の悪ガキから罵倒を浴びせられても、じっと耐えている。
受容というか、あるがままに受け入れているという感じで、東洋思想にも通じる、ある意味大人な人たちなのだ。
さて、この映画の一番の見所は、アーミッシュの村人全員が参加する納屋作りのシーンだろう。
みんなで力を合わせ1日で大きな納屋を作り上げる様子は圧巻だし、最初、ジョン・ブックに対して距離を置いていた村人たちも、一緒に汗をかくことで少しずつ心を開いていく。
そしてラスト、いつも嫁や孫に「イングリッシュには気をつけろ」と厳しくいさめていたレイチェルの義父の、最後の言葉に思わずほっこりとなった。
ああ、それにしてもアーミッシュの世界には憧れるなぁ。
怠け者で協調性のない私がなぜ、こんなに惹かれるのか分からないのだけれど。
そして、男はやっぱり、大工仕事が出来ないとね。
コメント
コメント一覧 (2)
私も大好きな映画です。映画館で観れるなんて羨ましい。
ハリソンフォードとケリーマクギリスの代表作ですね。
舞台になったペンシルベニア州だけでは無く、私の住んでいる中西部にもアーミッシュが点在しており、場所によっては結構見ます。
大工仕事が、ろくにでいない私でも、アーミッシュ的なライフスタイルに憧れます。
Be careful, Englishman!!
社会で共存しているところに、アメリカの懐の深さが伺えます。