イギリスの歌手、エイミー・ワインハウスは大好きなアーティストだ。
たぶん中学生の頃キャロル・キング以来の、夢中になった女性歌手ではないだろうか。
初めて彼女の歌声をラジオで聴いたとき、きっとこの人はベテランの黒人ソウルシンガーだと思い込んだものだ。
それほどエイミーのボーカルは熟成されたいぶし銀の魅力に溢れていた。
そして代表曲『リハブ』を聴くと分かりやすいのだが、彼女のボーカルはテンポが少しずれているというか、微妙に遅れている。
だが逆にそれが心地よく味わい深い世界を作っているのだ。
きっと彼女は既成の『音楽機構』にとらわれない稀有な才能の持ち主なのだろう。
そんな魅力あるエイミーだが、2006年の名アルバム『back to black』以降、ここ数年聞こえてくるのはゴシップばかり。
薬中毒、アルコール中毒、奇行、逮捕・・・・・・。
スキャンダラスなニュースは、彼女が2008年グラミー賞で5部門受賞した後でも、終わることはなかった。
今年に入って、もはや「廃人同然」という噂も聞き、やきもきしていた時、スカパーで、エイミーのライヴ映像を観ることができた。
それは2008年7月、アイルランドでの野外ライヴで、黒っぽいスーツの男性バックバンドを従えたシンプルなステージだ。
そこでの、白いキャミソールドレスのエイミーのなんと可愛らしい事!
優等生レディ・ガガのようにダンスが出来るわけでもなく、歌いながら不器用に体をくねらすだけ。
そのしぐさが、まるでおしっこをがまんしている少女のようで、頻繁にずり落ちてくるキャミソールドレスの肩ひもをせわしなく上げる仕草。
その無頓着さ、天真爛漫さ、思わず抱きしめたくなるほどの愛おしさ。
それでいて響いてくるのは、深みのある天下一品の歌声だ。
今は批判の嵐にさらされているが、彼女はいつか必ず復活する。新しいアルバムを楽しみに待とう。そう思ったものだ。
今朝、新聞の片隅で、エイミーの訃報を知る。享年27歳。
Back to Black
クチコミを見る
コメント