画家たちの二十歳の原点

前回のエイミー・ワインハウスのように、音楽家には、若くして驚くべき才能を発揮する人がいる。
古くはモーツアルト、日本においても、宇多田ひかるは16歳でミリオンセラーを出したし、滝廉太郎は21歳で『荒城の月』を作っている。

10代20代ですでに完成されているのだ。もちろん年配の音楽家もいるが、やはり若い頃の勢いは感じられない。

それに比べ、画家で若い頃ブレイクした、という人を私は知らない。

以前ゴッホの若い頃の絵を観たら、とても基本に忠実で、でも凡庸な感じだったのを思い出す。
つまり、絵や彫刻、陶芸などは年を重ねれば重ねるほど、アバンギャルドになっていくようなのだ。

では今をときめく画家たちは二十歳の頃どんな絵を描いていたのか。

先日、下関市立美術館で『特別展 画家たちの二十歳の原点』を観た。

明治から現代までの画家たちの、二十歳前後の油彩作品を集めたものだ。画家は53名、作品数は約110点。

黒田清輝、青木繁、梅原龍三郎から、草間弥生、横尾忠則、石田徹也まで、夭逝した人、長生きした人、現在も活躍中の人など、そうそうたるメンバーの20歳の原点がそこにあった。

それぞれに見ごたえがあったが、全体的にどの作品も暗い。
まだ自分が何を描いたらよいのか分からない、テクニックや基礎に縛られて思うように描けない、あるいは尊敬する画家の呪縛から逃れられない。

絵の横には、作家たちが書いた日記や手紙の言葉が張ってあるのだが、悩み、苦しみを吐露したその言葉がまた重く暗い。

20歳の画家たちにとって明るく楽しい青春なんて全く無縁なのだ。

ただ20歳で結核で亡くなった関根正二の絵はしっかり完成されていたように思う。
自分の宿命を悟っていたのだろうか、すごい人だ。

結核、スペイン風邪、そして不慮の事故死というのが、早世した人たちの原因トップ3のようで、自殺した人は、いないようだ(よく分からないが)

そんな訳でかなり考えさせられた特別展でした。個人的には石田徹也氏には生きていてほしかったなー。
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