aoki1最近なぜか「青木繁」がマイブームになっている。

昨年が没後100年ということで、東京のブリジストン美術館で開催されたし、私の好きなBS日テレの番組『ぶらぶら美術・博物館』で大々的に紹介されたせいだろう。

ところが恥ずかしいことに、青木繁コレクションの本家ともいうべき、久留米の石橋美術館に私はまだ行ったことがなかったのだ。

同じ県内に住みながら、なんという怠慢さ!

これではいけないという事で、早速、石橋美術館に、はせ参じたわけだが、日曜日に出かけたのにもかかわらず、美術館の閑散とした雰囲気というか、お客の少なさにびっくりした。

数少ないお客も、大半が高齢者割引の対象者と思しき方々ばかりなのだ。
建物や設備が立派なだけに、石橋さん大丈夫なのか、それともお兄さんの(弟かも)、ブリジストンさんが稼いでくれるから回っていけてるのか、と余計な心配をしてしまった。

先日行った九州国立博物館の『細川家の至宝』が、押すな押すなの大盛況だったせいかもしれない。
そんな訳で、『海の幸』などの名作を一人独占できる贅沢に浸るよりも、申し訳なさの方が勝ってしまった。

閑話休題。 青木繁については、『海の幸』が大絶賛された後、自信をもって東京府展覧会に出品した『わだつみのいろこの宮』が、期待はずれの3等末席に終わり、失意のうちに父危篤の知らせを受け、故郷の久留米に帰り、その後中央画壇に戻ることもなく、放浪の旅の果て、28歳の若さで亡くなったと言われている。

今回、石橋美術館には展示してなかったが、彼の絶筆『朝日』をテレビで見たときは衝撃だった。

彼が晩年を過ごした佐賀は、九州の西の端であり、海から朝日は見えるはずもない。

余命いくばくかの彼が何を思って絵筆を握っていたのか、その気持ち、察するに余りある。

さて、問題の『わだつみのいろこの宮』、古事記をモチーフにしたこの作品、確かに美しいとは思ったが、あまり心に響かなかった。

それは『海の幸』を見たときの衝撃があまりにも強かったせいだろう。
『海の幸』の漁師たちは、私には、海から現れ海に消える精霊たちに見える。

その気高さとたくましさが、ぐいぐいと迫ってくるのに圧倒された。

『わだつみ・・』が3位末席に終わったのも、中央画壇の「青木はもっとすごい絵が描けるはずだ」という期待があったからではないか。

だがそれを受け止めるには、青木はあまりにも繊細でかつ若かったのだ。

さて美術館の帰り、久留米駅も閑散としていた。

九州新幹線も開通したのに、こんなので良いのか!

失意のうちに亡くなった青木を思い、ほろ苦い思いが残った石橋美術館であった。
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