昨年の12月23日、作家の葉室麟さんが亡くなった。 その訃報は、クリスマスイヴの喧騒とキタサンブラックフィーバーの陰に無くれ、殆どマスコミの話題になることはなかった。 彼は私と同じK市出身であり、市内の書店を巡ってみたが、追悼コーナーを設けている書店は一つもなく、まさしく故郷の作家は、冷たい木枯らしと一緒に消えていったのだ。 50歳を過ぎて作家活動を始めた葉室さんは、数回の直木賞候補の後、60歳で、『蜩ノ記』により、晴れて直木賞作家となる. だがその授賞式は、「石原慎太郎批判発言で」有名となった、芥川賞作家、田中慎弥さんに話題が集中し、葉室さんの陰は薄かった。 葉室さんの描く歴史小説の主人公は、派手さとは無縁で、地味で報われない、損な生き方をしているように見える。 でもその佇まいは、凛として清々しい。 それは葉室麟さん自身の姿なのだろう。