ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

食べ物

ちびくろサンボはカレーを食べた

虎バターをたっぷり使ったホットケーキが出てくる『ちびくろサンボ』は、だれもが好きは童話だが、この作品について、今は亡き米原万里氏が、著書『旅行者の食卓』で、こんなことを書いている。

サンボはいわゆる黒人(ネイティブアフリカン)ではなく、インド人だったのだ。

『ちびくろサンボ』の著者は、英国人、ヘレン・バナーマンで、彼女は当時、夫と共に、植民地であったインドの奥地で、医療活動をしていたらしい。
そして離れて暮らしている子供たちのために絵手紙を送り、その中に、小さい男の子と虎のお話もあった。

その物語がやがて英国で絵本になり、世界中に翻訳された訳で、実際、作者ヘレンの描いた絵ではサンボはインド人の顔をしている。

それを日本の出版社がステレオタイプの、色が黒くてアフロヘアーの黒人に仕上げてしまったらしい。

確かに虎は、アジアのみで生息する動物だ。そしてホットケーキというのは、あのふかふかのパンケーキではなく、インド料理でおなじみのナンらしい。

そして虎バターと言うのも、インドでよく使う油脂、ギーとの事。

サンボが食べたのは、ナンだったのか。

ただ、無味無臭のナンだけを169枚も食べるのは考えにくい。
そうか、サンボは、それでカレーを食べたのだ。

インドの青い空、熱い風、黄色い虎。

サンボの赤いシャツ、青いズボン。日傘。

焼きたての香ばしいナンに付けた褐色のカレー。

出版社が原作に忠実であれば、また違った『ちびくろサンボ』が生まれたことだろう。そしてカレーはもとより、ナンも今以上に普及したにちがいない。

昼食にホットケーキを焼いて食べ、夕食にカレーを食した日曜の休日にふと浮かんだ妄想でした。

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ちびくろ・さんぼ
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幻のお菓子は蜜の味?

最近、癌で急逝した米原万里氏の著作を読むのがマイブームになっているが、もうすぐすべて読み終えそうで、とても切ない。

いままで私のカテゴリーにまったくなかった旧ソ連や東欧(今はそう呼ばないらしいが)についての目を開かせてくれ、英語圏以外の外国語と日本語の関係性という新しい世界を開かせてくれた。

それにしても氏はスケールの大きい人だ。例えれば、子供を6,7人育てているたくましいおかみさんといった感じか。だから書かれているものも、机上の論理ではなく、生活に密着したぬくもりが感じられる。

さて、氏はかなりの大食漢らしく、食べ物に関する話題も多いが、これはそれ、子供の頃の東欧暮しからか、不思議な食べ物が登場する。

その一つが、「トルコ蜜飴」

何とも字面だけ見てもヨダレが出そうではないか、トルコ蜜飴。

トルコは養蜂が盛んだ。きっとその美味しい蜜をたっぷり使ったお菓子に違いない。西洋のように牛乳や卵などは使わず、トルコ独特の香辛料をきかせたそのお菓子は甘く、それでいてひなびて郷愁をさそう味わいだろう、あのボスポラス海峡の夕焼けのように(つか行った事ないけど)

などと想像をたくましくしていたのだが、なんとそのトルコ蜜飴より100倍美味しいお菓子があるという。その名は「ハルヴァ」

プラハのソビエト学校で、ひと匙味わっただけのそのお菓子が忘れられず、幻のお菓子を求めて氏の苦しい旅が始まる・・・。

かように、氏の食べ物の話には、苦しみが付きまとっている。

小学校の頃家のゴミを燃やしていたら(以前は各々の家でゴミは処分していたのだ)見覚えのないバナナの皮を見つけ、知らない間に親が食べたのを知り泣きじゃくる。

ソビエト学校の林間学校で、『おむすびころりん』のお話をみんなに聞かせているうちにだんだん悲しくなり、夜も眠れず一週間苦しみ続け、とうとうプラハにいるお母さんに「おむすびが食べたい」と手紙を出す。

氏にとって食べる歓びより食べられない苦しさの方が心に残っていたのだろう。

癌の末期、ほとんど好物を口にすることは出来なかっただろう氏が、どうか今、天国で「ハルヴァ」を堪能していますように・・・。


 

 

 

 

雪の夜とアイスクリームは

最近なぜか、アイスクリームを食べるのが、習慣になってしまった。
特にお気に入りは、ハーゲンダッツのマカダミアナッツ入り。

夜、仕事から帰った後、お風呂に入り、ホッと一息つきながら暖かい部屋で、件のアイスクリームをほお張るのは、至福の時間である。

・・・・・・・つか、ずい分安上がりな人間ではある。

さて、冷たい食感を味わいながらふと思う。真冬の夜、暖かい部屋で、アイスクリームを食べるなんて、昔の人から見れば、なんと夢のような贅沢だろう。あの楊貴妃だって体験したことがないはずだ。
また徳川家康が孫、千姫に氷菓を食べさせるため、富士の万年雪を大人数で運ばせた、という話を聞いたこともある。

窓の外の雪明りを眺めつつ、傾国の美女や戦国武将の姫君に思いをはせながら、一時の贅沢に、しばし疲れが消える気がした。


冬

いつも心に大根を

先日の夜、テレビをつけたところ、なんか若手社長タイホとかで、各番組は上や下への大騒ぎ。

・・・・・おいおい、そんなことよりもっと報道すべき事あるだろ・・とひとりごちながらチャンネルを変えると、NHK教育で「きょうの料理」をやっていた。講師は私の大好きな鈴木登紀子センセ。そして献立が、これまた私の大好きなぶり大根!もう見るしかない。

そして、登紀子センセの作られたぶり大根のまぁ美味しそうなこと。味のしみ込んだ大根は飴色にかがやき、まるで琥珀のようだ。こうなったら明日のおかずはぶり大根しかない。もう頭の中ではだいこんとぶりが腕を組んでダンスをしている。

翌日さっそく作ってみる。さすがに登紀子センセのようにはいかないが満足の出来、ハフハフ・・・。一日たつと味がしみてもっと美味くなるだろう。

料理には「出会いもの」が多いけど、このぶりと大根ほど幸福な出会いがあるだろうか。どちらも今が旬だから、味も良いし値段も安い。
大根はぶりの生臭さとあくの強さを和らげながら、しっかり旨みを吸収する。

こんないい仕事をしている大根なのに、なぜか世間では扱いが冷たい。大根役者とか、大根足、一時話題になった大根めしは貧困の象徴だ。オールマイティなところが、逆に軽く見られているのかもしれない。

以前、池波正太郎のエッセイで、知人が重い病気になったが、医者にかからず大根だけを食べ続けて完治した、というくだりがあった。大根には毒消しの作用もあるようだ。

さて、今度は池波氏の時代小説を真似て、「小鍋立て」をしよう。一人用の小さな土鍋で、あさりのむき身に大根の千六本、もしくは豆腐に大根といった淡い取り合わせだ。

ささやかな冬の愉しみはまだまだ終らない。

 

 

 

 

 

おばあちゃんの食堂

会社の昼休み、私がよく行く食堂はとにかく量が多い。

豚カツ定食を例にとると、大盛りのご飯、味噌汁、香の物は当然として、メインの豚カツは大皿にはみ出さんばかりに乗せられているし、それ以外に小鉢が4皿、ポテトサラダ、ひじきの煮つけ、揚げ豆腐、かぼちゃの煮つけなどが付く。もちろん付け合せのキャベツもたっぷり盛られてくる。
それで450円なのだからイヤになってしまう。

客層はガテン系の男性が多い。以前はもっと品数が多かったのだが、お客から「量が多すぎる」とのクレームがあり、今の品数になった。

初めのうちは目を白黒させたものだが、今では馴れっこになってしまった。

ここの店主は年配の女性だが、このおばあちゃん、私たちが食べ終えると、やおらテーブルにやって来て

「お嬢さん方、食後のデザートどうぞ」と、時々女だけに、モナカやかるかん(鹿児島名物ね)、柿などをサービスしてくれる(おばあちゃんの目には、女性高校生も40女も、お嬢さんに見えるらしい)

どうやら彼女は、「女は甘いものが好き」と信じ込んでいるようだ。

もしおばあちゃんが妙に機転がきく人で、「女性なので、ご飯を少なめにしました」などと言われたら、少なからず反感を持っただろうが、相変わらず豪快に大盛りのままなのが嬉しい。

「男性でも甘いもの好きな人いるけど、まぁせっかくのおばあちゃんの好意だしぃ」と思い、太鼓腹になった中年女たちは、シーハーシーハーしているおじさんたちのテーブルの間をぬぐい、おばあちゃんに精いっぱいの愛嬌を振りまきながら、寒空の下、職場へと戻るのであった。

寒天の消えた八月

黒酢寒天ブームに全く気がつかなかった私。

ここ何ヶ月か、スーパーや食料品店で探すがなかなか見つからず、たまにあってもべらぼうに高い。おかしいおかしいとは思っていたのだが・・・。

特に大好物ではないのだが、暑い時期になると寒天に惹かれる。

くずきり風に切って黒蜜をかけたり、牛乳のかんてん寄せや、缶詰のフルーツを切って加えてみたり。ひんやりと冷えたそれは少しレトロな風味がして郷愁をさそう。

あまり自己主張をしない、たよりない食感が夏バテで疲れた胃腸に心地よい。手に入りにくいとなると余計に食べたくなる。

私は寒天デザートを作るとき、砂糖をたっぷり入れるので、ダイエットなんて考えてもみなかった。早くブームが終わりますように。

和のしつらい

0440食欲の減退するこの時期、料理の参考にしているのがこの「女将さえこの今宵の酒肴」。さっぱりして箸の進みそうな肴ばかり。こんな気の利いたものをちゃっちゃと作れる人ってうらやましい。

だが和の肴って、一見簡単そうで、実はめんどうなのも事実だ。酢やダシなど調味料の塩梅も難しい・・・・・。そんな訳で、結局今日も手抜きの冷奴と枝豆でごまかすのであった。

さて、そんな暑い日々の中、先日わが市で夏祭りがあった。夕暮れ近くになると、街中は浴衣姿の女性で溢れる。数人の女性が色とりどり趣向をこらした浴衣を身にまとい、笑いさざめきながら歩く姿はまことに様子が良く、疲れた中年女じゃなくても見ていてホッとする。

だがひとつ問題があった。浴衣を着ている人はほとんど10〜20代の若い女性。私のようなオバサンで浴衣を着ている人は皆無。なんか肩身が狭いよう。

「女将さえこ」さんみたいな、着物の似合う妙齢な女性がもっと増えてくれないかな、と願いつつ、化粧崩れを気にしつつ、花火舟の宵は更けていった。

 

ビー玉の音

011コカコーラのCMを見て、思うことがある。  いずれも、みめうるわしい男女が、おいしそうにコーラを飲み終え、満面の笑みを振りまく、がパターンだ。

だが私は、あんな爽やかにコカコーラを飲むことが出来ない。炭酸が苦手なため、ひとくち飲んだだけで喉が「ジガジガ」するし、さらにゲップが出てくる。多くの人たちは、やはりあのCMのようにゲップひとつせず、美しく飲みほすことができるのだろうか。

そんなわけで、私の長い人生の中で、自らコカコーラを買った回数は10指に足りるくらいである。

そして、やはり飲んだ回数は少ないが好きな飲み物の中にラムネがある。同じ炭酸飲料なのに、こちらは味がまろやかで喉の「ジカジカ」感が少ない。何よりあの小ぶりなビンとビー玉が良い。

好きなのに飲んだ回数が少ないのは、これらラムネに会うのが、夜店や花火大会といったイベントの時だけだからだ。氷の入った金盥で冷やされているそれは、ビンまで濡れ濡れとして、涼やかさを誘う。そしてビー玉のカチカチという音。

そうそうラムネは、田舎の駄菓子屋でも売っていた。昼寝してるばあちゃんを起こしてラムネと花火を買ったのはいつのことだったか。

今や世界を席捲しているコカコーラと、ほこりっぽい田舎道でひっそり売られているラムネ。中身にそれほどの優劣はないと思うのに、まるで清涼飲料界の、勝ち組と負け組みだ。

でも「ラムネ」という言葉を聞くと、懐かしい気持ちになる。それは、親に連れられての花火大会や夏祭り、田舎のイトコ達と過ごした夏休みを思い出させてくれるから。

経済的には成功しなくても、人の心に、ほっこりとした幸せを残してくれる。そんな生き方もまた楽しだ。

 

 

 

秋ナスは危険な香り

0400大人になって好きになった食べ物に「ナス」がある。

子供の頃はキライだった。スポンジみたいにスカスカして味がなくて。特に焼きナスにした時の焦げたような匂いはイヤだった。

それが今やナスは大好物。焼きナスはもちろん、味噌いためや蒸して中華風にしたりグラタンにしても美味しいし、スパゲティや夏野菜のカレーにしても最高!

そうそう、漬物という手もある。紫紺のぬか漬けはご飯にも酒の肴にも合う。

さて、ある本にて知った話だが、かの二ノ宮尊徳(金次郎)が、夏のある日ナスのぬか漬けを口にしたところ、秋ナスの味がするのに気づいた。周囲の人たちに確認すると、「そういえば空の様子や風のそよぎもどことなく秋っぽい」という意見があり、彼は確信する、「飢饉が来る」と。

ただちに尊徳は対策に走り回り、ヒエ・粟などの飢饉に強い食物をたくさん植えさせた。

天保の大飢饉の初年、多くの餓死者が出たが、尊徳の治める桜町領だけは1人の餓死者も出なかったそうな。

それにしてもすごい。ナスを食べただけで飢饉を予想するなんて。第一秋ナスは嫁に食わすなって言うくらいうまいものだ。普通だったら、ああ美味しいナスだ、で喜んでそこで終わりなのに、気づきの鋭さと言うか危機管理に長けているというか。

きっとそれは、いつも真摯な目で自然と向き合っていた尊徳だからこそ出来たことだろう。

そして、養殖と天然ものの味さえ区別できない味覚偏差値の低い私は、偉大なる先人に思いをはせながらも、今日も手抜きしてスーパーでナスの漬物を買うのであった・・・・。

 

 

 

 

つゆと豆腐

山冷蔵庫にお豆腐があると安心する。煮てよし焼いてよし、サラダにしても美味しいし、不意のお客様が来たら、とり合えず薬味を添えてお出しすることができる。

栄養価があって低カロリー、それでいて自己主張しない、よくできた嫁のようだ。

さて、九州地方はつゆ入りを迎えた。朝から雨が降り続いているが少し肌寒い。そんなときふと、池波正太郎の短編「梅雨の湯豆腐」を思い出した。

いわゆる仕事人(殺し屋)の彦次郎は、普段はひっそりと1人暮らしをしている。料理が好きで、梅雨冷えのある日、豆腐を買い求め、湯豆腐と焼き海苔で酒を楽しむ。

うーん、梅雨のジメッと寒い日に、湯豆腐あうだろうな、と思いつつも読者は、非情と思われた主人公の思いがけない人間性を見いだす。

湯豆腐ひとつで、あざやかに人の心を描き出す池波正太郎氏は、稀代の料理人だ。


梅安料理ごよみ
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