ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

Category: ロシア

今月初め、携帯電話をガラケーからスマホに替えた。

別にスマホにする気はなかったのだが、ガラケーの電池が無くなり、ショップに行ったら、そのタイプの電池はもう製造していないと言われ、仕方なく替えたのだ。

色々割引をしてもらったが、それでも通信料はかなり高い(今までは月1500円前後だったのに。。)

元を取ろうと(考え方が変)、SNSにチャレンジしてみたが、スマホ初心者の機械音痴の私、何が何やら、さっぱりわからん。

恐る恐る始めたものの、今だによく分かっておらず、よそ様に迷惑をかけてないだろうか、マナー違反をやらかしていないだろうか、不安で一杯だ。

もし迷惑をかけていたのなら、本当にごめんなさい。

さて、話は変わって、私の今一番のニュースは、森友学園関係でも、レスリング界のパワハラでもない。

それは、英国で起こった、ロシアの元二重スパイと、その娘が、神経ガスで殺されそうになった事件だ。

確か10年ほど前も、ロシアの元スパイが毒殺される事件があったと記憶する。

あたかも東西冷戦を彷彿させるような事案が、今起きているのだ、

英国のスパイものの小説や映画には名作が多いが、フィクションの世界の話だけにとどめて欲しい。

英国のスパイ映画、「裏切りのサーカス」を観たとき、そこで描かれた、旧ソ連KGBの冷酷さに震え上がり、ああ旧ソ連に生まれないで良かったと、しみじみ思ったものだ。

そういえば圧倒的な強さで大統領に再選した、プーチンさんはKGB出身。

ロシア国民は、圧倒的な権力を持つ、元KGBの男に対して、恐怖は感じないのだろうか。

裏切りのサーカス





















さとうさん今年の4月、エリツィン元ロシア大統領が亡くなった時の日本の対応には、唖然とするものがあった。

他国では、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領(パパの方ね)、メジャー元英首相他、欧州の各国首脳や外相が国葬に訪れたのに、日本では、駐在モスクワ大使が参列しただけ。

ソ連消滅、そしてロシア連邦発足の中心人物であり、日露関係においても、一時かなり良好で、もしや北方領土も・・・・と思ったものだ。

この日本の冷たい対応・・・。単なる外務省の不手際ならば、お粗末過ぎるし、もしロシアを軽んじているのであれば、深刻な問題だ。
エリツィンが危険な状態であるころは、前から分っていたのだから。

さて、佐藤優の『自壊する帝国』を読んだ。

これは、ソビエト連邦が崩壊していく姿を現地でリアルタイムで見続けていた新米外交官の青春物語である。

この物語、やたらとご馳走が出てくる。

最上級のキャビア(茶さじ一杯で4千円くらい)などの珍味佳口。
最高級レストランでのロシアの皇帝料理、フランス料理、イタリア料理、日本料理の数々・・・・・そしてウォトカ、ウイスキー、等等。

佐藤氏がソ連の要人と会うときは必ずご馳走も寄り添っているのだ。

ただ彼自身はそんなにグルメではないようだ。

ソ連の代用コーヒー(藁と麦を煎じて牛乳を入れて煮込んだもの)が好きだったり、前著『国家の罠』でも拘置所の食事は意外とうまかったと感想を述べている。

それにしても彼の人脈作りはスゴイ。

政府の首脳、知識人、軍人、ジャーナリスト、宗教家・・・。

綺羅星のような人たちが、異国の新米外交官に、重要な情報を流す。若しくはリスクを冒してまで重要機密を漏らす。

確かに佐藤氏は、宗教や哲学の素養があり、魅力的な人物だが、それだけで、西側に重要な情報を教えるものだろうか。

確かにお金の力もあろう(当時ルーブルは下落していた)、彼のご馳走攻勢が功を奏したこともあろう。だが私は思う。

日本の情報をソ連に漏らしていたのではないか。

彼自身、他の著作の中で『情報の収集はギブ・アンド・テイクだ』と発言しているし。

真相は分らない。

だが、仕事を愛し、自分の能力の限りを尽くしてソ連(ロシア)高官らと絆を作っていた姿には、心打たれるし、そのひたむきさには感動する。

そんな若き日の佐藤外交官と、今の外務省。

ロシアは遠くになりにけり。

自壊する帝国

 

 

 

 

 

米原万里さんの著書『ロシアは今日も荒れ模様』を読んだ。

ロシア語の同時通訳者として、様々な要人と接してきた体験を元にした独自の『ロシア人観』が描かれていて大変面白かったのだが、唯一つ気になることがある。

作者のサーヴィス精神が旺盛なのか、感情の起伏が激しすぎるのか、どうも針小棒大的な物言いが多い。

特に、「ウォッカ」について。この本を読むと、全てのロシア男性は大酒飲みで、不景気の時はルーブルの変わりに、ウォッカが流通しているような錯覚に陥る。

だがロシアにだって下戸はいるはずだし、酔っ払っている父親を反面教師にして、酒嫌いになった人も考えられる。

ちなみに、酒乱だったエリツィンに比べ、プーチンは下戸ではないが、あまり酒は飲まないらしい。

さて話は変わって、今大相撲一月場所が開催中である。

近年外国人力士も、小錦や曙といったハワイ勢から、モンゴル、旧ソ連、中央ヨーロッパという、ユーラシア勢へと変わってきた。

どうやら国技館では神風が吹かないらしいので、モンゴル帝国の栄華は当分続くだろう。

そして碧眼のブルガリア、そしてロシアの力士。
堂々たる白い体躯と、無愛想この上ない表情が、土俵に緊張感と不思議な風格を醸し出している。

旧ソ連時代の圧制、そして崩壊後の混乱。耐え忍んできた寒い国の力士達は、きっと近い将来、優勝という花を咲かせることが出来るだろう。

その時の祝杯は、やはりウォッカだろうか。

ロシアは今日も荒れ模様

 

 

 

 

 

 

羊元旦早々、「今年は(ブログ)は毎日更新するぞ!」と宣言しながら、いきなり2日のエントリーをサボってしまったへたれな自分だが、ほぼ毎日更新、と言うことでご容赦いただきたい。

さて、昨年亡くなった米原万里氏の著書に『オリガ・モリゾナの反語法』というのがある。

スターリン時代のロシア(ソ連)を背景に、激動の人生を歩んだ人々を描いたスケールの大きな作品なのだが、今日語るのはその内容ではない。本のあとがきに載っていたある女性ジャーナリストのことである。

その人の名はアンナ・ポリトコフスカヤ。

彼女はチェチェン紛争、チェチェンでのロシア軍の人権侵害を訴え、ロシアトップ、特にプーチンを糾弾してきた女性である。

あとがきによると、
エリッインがチェチェンで失敗したのは、ジャーナリストを野放しにしたせいだ。敵の兵士を殺すより前に、ジャーナリストを殲滅せよ、とKGB出身のプーチン大統領は檄を飛ばした。それで大勢の書き手はどんどん弾圧されて、今、女性の書き手ががんばっているんですよ。」
と、書かれている。

それを読んだ時は「ふ〜ん、ロシアにも江川紹子さんのような人がいるのね。でも相手があのプーチンだったら、江川さんの10倍は頑張らないと太刀打ちできないだろうな」
などとノンビリ考えていたものだ。

本のあとがきでは、自分の良心に忠実で誰が何と言おうと流されない、そんなロシア人の良い気質の例として彼女を紹介していたのだが、それを読んだ数日後に暗殺されるとは、予想だにしなかった。

彼女は2児の母でもあり、江川さんと同じ年齢だ。

その後も、ロシアで不審な死や毒殺があとを絶たないのは、周知の事実だ。

ある意味、これほど分りやすい図式はないと思うのだが、それでもプーチン大統領に対する非難の声はあまり聞かれない。

それが不気味で、ロシア政府に対してどうしても信頼が持てないのだ。

オリガ・モリソヴナの反語法

 

 


 

 

 

 


 

先月、第一線のロシア語同時通訳者で作家の、米原万里氏が急逝した。まだ56歳。卵巣癌だという。

ショックだった。彼女の著作は『不実な美女か貞淑な醜女か』しか読んでいないのだが、その卓越した語り口、豊富な経験に裏打ちされたユーモア溢れる文章には魅了された。

語学ダメ人間には未知の世界である同時通訳の世界を、赤裸々に語り、読む方は大笑いしつつ納得してしまう。

これだけ自分を捨てて真実を語る女性もめずらしい。ナンシー関以来ではないか。彼女の「通訳=売春婦説」には思わず膝を打ってしまった。

そして、時々テレビ等で見かける彼女はグラマラスな美女であった。

お父上が日本共産党員だった関係で、子供の頃から東欧やソ連で暮していたそうだが、共産党員の娘というよりも、ロシア貴族の末裔といった雰囲気を漂わせていた。

それにしてもソ連崩壊という激動の時期、彼女自身は共産党崩壊に関して忸怩たる思いがあっただろうが、時代の転換期にその中心で活躍できた事は、羨ましく思う。

殆どの日本人が知りえない体験をし、通訳としても作家としても才能溢れた女性がいなくなるのは、これからの日本にとって大きな損失だろう。

                                         合掌

                                         

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