イギリス映画「ラブ・アクチュアリー」は、英国好きにはたまらない作品ではないだろうか。なにしろ、かの国屈指のスターが目白押しなのだから。
ヒュー・グラント、コリン・ファースといった二枚目系、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマンら実力派、個性的なローワン・アトキンソンと、よくぞ揃えたものだ。まるで歌舞伎の顔見世興行みたいだ。
ところで首相役のヒュー・グラントを見ていて、おヒュー様も老けたなぁ〜、目じりのしわが目立ちすぎ〜などとほざき、ふと誰かに似てる?と思いつつその誰かが思い出せなくて悶々としていたが、ある日突然、頭に閃いた。
「よしりんだ!」
小林よしのり。愛憎半ばする評価は置いといて、彼はイイ男である。面長で愛嬌のあるたれ目、しまりのない口元はヒュー・グラントに似ている。でも似ているのは外見だけではない。
ヒュー・グラントは甘いマスクだが、自分の意見はハッキリ言う。かの「ラブ・アクチュアリー」のDVDコメンタリーでも、ライバル、コリン・ファースのことをボロクソけなしているが妙に憎めない。
外見は優しそうだが性格はマッチョ、しかし憎めないところが彼らの共通点か。
小林の「東大一直線」は好きな漫画だった。当時から彼は、他人から批判されるとすぐ突っかかるところがあったが、それが決定的になったのは、「おぼっちゃまくん」が大ヒットしていた頃だ。
エッセイスト江國滋氏(江國香織ちゃんのパパ)が、「日本語八つ当たり」という本の中で、漫画「おぼっちゃまくん」に出てくる「茶魔語」を批判したことがきっかけでバトルになった。そして1度火がついた反逆心はもう誰にも止められず、ゴーマニズム宣言へとなだれ込んでしまったのだ。
もし小林の見た目がコワモテだったら、江國パパは、あんな文章は書かなかっただろう。そしたら彼はゴーマニズムになることはなく、今頃は、時々他人に突っかかりながらも、数々の名作を生み出していたかもしれない。かえすがえすも残念だ。
やっぱり人は外見ではない。
おぼっちゃまくん (1)